“「本気で向き合う」 それがコミュニケーションの本質”

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氏名:
藤本 慶(ふじもと けい)
進路:
修士課程への進学(東京農工大学大学院 工学府 機械システム工学専攻)
所属:
工学部 機械システム工学科 4年
(GA参加当時:同3年)
研究内容:
ガスタービン高性能化のためのタービン翼冷却技術の開発
GA参加理由:
自分は人見知りだと感じていて、コミュニケーション力を身に付けたかった。また、国際事業開発を通して、今まで得たことのない経験とスキルを得たかった。

―― グローバル・アカデミー(GA)での経験と進路選択について藤本慶さんにお話を伺います。よろしくお願いします。

藤本:
よろしくお願いします。

―― 藤本さんは4月から農工大の大学院に進学するということですが、その進路を決めた理由やきっかけを教えてください。

藤本:
大学に入ったころから基礎研究よりは、一歩進めてすぐ実社会に出ていくような研究をしたいという思いがありました。現在所属している研究室ではガスタービンという内燃機関の研究をしていて、航空機のエンジンや火力発電所の発電機の効率化につながっています。そういった社会に役立つ技術を扱っている点が、自分に合っているなと思いました。

―― 研究成果が社会に還元されることを強く意識していたのですね。他大学の大学院は考えなかったのですか?

藤本:
他大学の大学院の研究室も訪問して検討しましたが、農工大は特に社会に役立つことを意識した研究に力を入れていると感じ進学を決めました。

―― 研究成果を社会に役立てたいという強いこだわりを感じます。何か意識するようになったきっかけがあったのでしょうか?

藤本:
社会に近い研究をしたいと思うようになったのは高校生のときでした。私は小学校6年生の夏から中学校3年生の夏までをアメリカで過ごし、帰国後、都内の公立中編入を経て高校に入学したのですが、アメリカと日本の社会のギャップは大きくて戸惑いがありました。自分と社会のズレに悩んでしまって、自分が生まれてきた価値みたいなことを高校生ながら考えていたんです。社会に対して何ができるか考えた末に、自分が好きな数学や理科の知識が活かせる理系のなかでも、より社会とのつながりが強い工学部に進学することを決めました。

―― 高校生のころから進路について深く考えていたのですね。GAでは科学技術と社会との関係や、国際社会で通用するためのコミュニケーションなどを学んだと思いますが、そういった経験は大学院への進学を考えるにあたってどのように影響しましたか?

藤本:

大学院で学びたいことの幅が広がったと感じています。社会につながる研究成果を生み出すためには、研究活動を通じて自身の専門性を高めていくことはもちろん必要です。しかし、それだけではなくて、バックグラウンドの異なる人々とのコミュニケーション能力を身に付けることが重要だと感じました。

コミュニケーションの大切さを意識するようになったのは、思考構築プログラムなどのグループワークでの経験が大きかったと思います。普段の家族や友人とは違って、お互いのことをよく知らない中で議論しなくてはなりません。そこでは、「実用的なコミュニケーション」を意識しなくてはいけないと感じました。

―― 「実用的なコミュニケーション」ですか?

藤本:
実用的、というのは形だけのスキルではなくて「本気で向き合う」ということです。それを実感した印象的な出来事がありました。思考構築プログラムのグループワークで、それまでリーダーをやってくれていた先輩が来られなくなってしまい、自分が突然代役を務めることになったときのことです。私はそれまで、部活などでもリーダーシップをとった経験がほとんどありませんでした。私が言いだしてみんなに集まってもらったのですが、最初は勝手がわからず、何とか自分の考えを伝えようとしてもうまくいかなくて、メンバーも険悪な雰囲気になってしまいました。

―― 聞いているだけで胃が痛くなりそうな場面ですね...どうやって乗り越えたのでしょう?

藤本:
思い切ってメンバーに自分の本音を伝えました。自分はリーダーシップをとった経験がなくて困っていると。自分が仕切ることはできないし、自分がぼんぼん考えを出して押しつけるのは嫌だったので、もう自分はみんなの話を聞きます、私がまとめるので、どんどん言ってくださいとお願いしたんです。すると、みんな最初は戸惑っていましたが、一人が意見を言ったら他の人も言いやすくなって、意見が次々に出てきました。

―― 困っていることを正直に伝えたのですね。非常に勇気のいることだったと思います。

藤本:
そこからは相手の話をしっかり聴くことを意識しました。一人ひとり話すスピードや考えをまとめる時間が違うので、置いてけぼりになる人がでないよう途中で議論をまとめて説明するなどして、フォローするようにしました。結果的には、発表に向けて意見がまとまり、リーダー不在の危機を乗り切ることができました。

―― 本気で向き合う、「実用的なコミュニケーション」というのは、まさにグローバル・プロフェッショナル・プログラム(GPP)が掲げるグローバル・コミュニケーションの本質を突いていると感じます。

―― さて、今年度からはGPPにも参加していて、来年はいよいよ大学院に進学することになりますが、それぞれの取り組みに対する抱負を教えてください。

藤本:
まず大学院では、やはり研究活動や講義を通じて専門性を磨いていきたいと考えています。専門分野の知識や実験技術をしっかり身に付けたいですね。一方で、コミュニケーション能力や英語力はGPPを通じて培っていきたいと考えています。また、GPPはそれまで学んだことに対するフィードバックの場としても捉えていて、次に何を学ばなければいけないかを考える手助けになってくれると感じています。

―― 大学院での研究とGPPを両立していくわけですね。なかなか大変そうですが不安はありませんか?

藤本:
あまり気負わないようにしています。大学院の修士は2年しかありませんから、完璧を目指そうとしても時間が足りません。GAを通じて、自分の強みと弱みを理解したうえで、「自分にできることは何か」を常に考え続けることが重要だと感じています。将来のことも、漠然としていて不安がないと言えば嘘になりますが、そのときの1日、1時間、1分、1秒に、周りを見て状況を分析し、自分の頭で自分にできることを考えて一つひとつこなしていくというのは、社会に出ても大事なことだと思います。

―― 自己理解と思考の連続ですね。社会に役立つ研究を目指してぜひ頑張ってください。では最後に、すでにGPPに参加している、あるいはこれからGPPに参加しようと考えている学生に向けて、メッセージをお願いします。

藤本:
自分と向き合うことを大切にしてほしいと思います。自分は何が好きで、何ができるのか、逆に何が嫌いで、何ができないのかを理解すること。それを100%受け止めて、自分はどうすればいいのか、そのとき、その場で、何をして、どう自分を生かしたらいいのかを考えることが重要だと思います。日本にいると、自分が他の人とどう違うかということに気付きにくいと思うのですが、海外に行かなくても自分というのを考えるのが大事です。押しつけるわけではないのですが、少し意識してもらえたらいいなと思います。