“本当の「私らしさ」を知りました”

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氏名:
桜井 柚里穂(さくらい ゆりほ)
進路:
厚生労働省 獣医系技術職員
所属:
農学部獣医学科
研究内容:
新薬承認のための犬における薬物動態の研究
GA参加理由:
進みたい道に気付くきっかけになるかもしれないと思ったから

―― グローバル・アカデミー(GA)での経験と進路選択というテーマで、春から就職される桜井柚里穂さんにお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

桜井:
よろしくお願いします。

―― 春からは厚生労働省の獣医系技術職員として働くとのことですが、その進路を決めた理由について教えてください。

桜井:
厚生労働省への就職を決めた理由は、動物と人両者のために国、社会という広い視野で働きたいと思っているからです。実は、私は大学に入学した際は、小動物の臨床獣医師(いわゆる動物のお医者さん)になりたいと思っていました。しかし、獣医学科で学生生活を送るなかで「獣医の世界は外の社会から区切られてしまっている気がする」という小さな違和感を抱くようになり、徐々に“社会にとって”明確なプラスを生み出している実感を求めるようになりました。

―― その小さな違和感に対して、自分の進路が臨床獣医師ではないと気付いたきっかけはありましたか?

桜井:

きっかけとしては、学部4年生のときのアメリカへの短期留学が大きかったです。ホストマザーやUC. Davis(カリフォルニア大学デービス校)の先生方が、「あなたは何をしたいの」という質問を本当にまっすぐに投げかけてくれたとき、初めて一歩立ち止まって、どんな職業につきたいのかではなく、何をしたいのかを真剣に考えました。考え尽くした結果、私の中から出てきたのは「“社会に”良いインパクトを与えたい」という幼いころからぼんやりと持っていた想いでした。

アメリカに行くまでは、違和感を感じながらも、獣医学科に入ったら小動物臨床に進んで…と、大勢の人が通るレールに私も乗って進んでいくことをどこか当たり前のように感じていました。日本の獣医学生のマジョリティとは少し違う感覚をもっている自分を認めることが怖かったのだと思います。

―― 留学の経験が大きく影響したのですね

桜井:
そうともいえます。ただ、私の場合は結果的にアメリカ留学がターニングポイントになりましたが、留学をしたから何かが変わるというわけではなく、本質は自分の気持ちに正直になることだと思います。

―― 事前のアンケートで、GAに参加した理由は「もがいていたから」と書かれていますが、今の話を聞いていると、悩みながらも自分の考えがしっかりしていらっしゃる印象を受けました。GAに参加した、ちょうど半年ぐらい前はもがいていたのですか。

桜井:

そうですね。アメリカに行ったあと、社会に良いインパクトを与えたいという想い、つまり「何をしたいか」(what) の部分は全くぶれなかったのですが、「どのような方法をとれば実現できるのか」さらに言えば「そもそも私がどんな方法を取りたいのか」(how) という部分が分からず、進む道を決められない時期が続いていました。

しかも、「私にしかできない方法でやりたい」というこだわりが強かったので、私にしかできない方法って一体何なんだろう…と思いながら、少しでも気になった進路を片っ端から調べたり、大人の方と話す度に進路の相談をしたりしていました。このように全く未来が見えていなかったので、毎日不安で仕方なく、とにかくきっかけになりそうなものは何でもやってみようという気持ちでGAに応募しました。

―― もがいていたなかでGAに取り組まれて、進路選択にどれだけの衝撃や影響がありましたか。

桜井:

GAの影響は、私にとってはすごく大きくて、「自分らしさ」の捉え方が変わりました。さっき言った通り、私は「自分にしかできない方法」を模索していたのですが、以前は自分らしさがよくわかっていなかったので、例えば「海外の大学院で公共政策を学んで、そのあと社会起業する」というように、人とは違うことをするという見えやすい形に、自分らしさを求めてしまっていました。

でも、GAでグループワークを行う中で、起業や留学といった珍しいことをしなくても、自分が物事を見て何を感じ何を考えるか、つまり自身の考え方や価値観がそのまま自分らしさなのだと思うようになりました。派手な手段への憧れがなくなったら、自然と、自分の芯となっている想いを大切にしながら働くことのできる就職先を選択することができました。

―― 「自分らしさ」を考え直せたのがGAだったのですね。

桜井:
そうですね。ちなみに、GAに参加していた間は、この気持ちの変化をまだなんとなく感覚として感じている段階でした。きちんと自分の言葉で話せるようになるには、GAが終わってから3ヶ月くらい必要でした(笑)

―― グループワークが自分らしさの捉え方を変えた印象的なエピソードがあれば教えてください。

桜井:
具体的なエピソードではないのですが、自身が深く考えたうえで他人の考えをじっくり聞くことを通して、他のメンバーと私自身との違いが浮き彫りになり、結果的に「自分」を知った気がします。授業で新規事業開発を行ったときや、パネルディスカッションに向けてチームで話し合っているとき、私はいつも「どうやったら人の意識や気持ちに働きかけるメッセージをつくれるかな」という発想をしていましたが、グループの他のメンバーの切り口は全く違いました。「私にとって当たり前の考え方は、実は他人の当たり前とは違うんだ!」と感じ、これはひとつの私らしさなんだと思うようになりました。

―― GAを通して自分らしさの認識が変わり、そのうえで獣医師として働くという選択をしたのですね。最初は今の獣医師のあり方に違和感を感じているとのことでしたが、最終的に獣医師としてキャリアをスタートしようと思ったのは、自然な流れだったのですか。

桜井:
獣医師として働くという決断をした理由は2つあります。ひとつは、獣医学を勉強するなかで持つようになった私の考えが私らしさだからこそ、それを生み出してきた経験を大事にしたいと思うからです。もうひとつは、今の獣医師のあり方に違和感を抱いてきたからこそ、私自身が当事者である獣医師として関わり、少しでも良い方向にしていけたらと思っているからです。

―― 獣医師として働いていくうえでの、これからの目標や夢を教えてください。

桜井:
これは私の遠くの夢ですが、人間と動物が共に幸せな社会の在り方を提唱していきたいと思っています。今の社会において、人間は実験動物や家畜から多くの恩恵を受けていますが、その分野が抱えている問題について、知る機会、考える機会は少ないと感じています。

―― その夢に対して,厚生労働省ではどのように働きたいと思っていますか

桜井:
具体的な目標としては、ルールメイク(法律をつくること)に携わりたいと考えています。法律は、社会を良い方向に進めていくために重要な役割の一端を担っていると思っています。また、法律を考える際には、その法律によって影響を受ける様々な立場の人に想像力を働かせることが非常に大切だと思うので、多くの人と関わりながら仕事ができる環境で多角的に物事を見つめる姿勢を身につけたいです。

―― 就職を考えるという観点以外で、GAの影響があったら教えていただけますか。

桜井:
GAを通して一番意識が変わったのは、「夢を夢で終わらせない」ということです。以前は、頑張って毎日を過ごしていたらいつか夢は実現する、くらいに思っていましたが、GAで本当に極限まで努力をして小さな目標(質の高い事業開発、海外派遣選抜やパネルディスカッション選抜など)を徹底的に叶えていくという経験をした結果、いつかの大きな夢を今日・明日にできることにまで細分化して、それを着実にこなしていくことが夢の実現への唯一の道だと考えるようになりました。目指している場所がどんなに遠くにあっても、そのために今日できることは必ずあります。短期のスパンで見ると、夢に向かって努力することは、山のようなTo Doリストをこなしていくようなことですが、そういう生き方をしていたら、気付いたら夢は叶っているのだと思います。

―― 桜井さんは夢があったうえで、GAを通して夢の実現に向けた行動や努力の方向性も得られたということですが、自分の夢がまだもてない、あるいはよく分からない学生も多いと思います。

桜井:
私も、もともと自分の夢がよくわからなかった人なので、その気持ちもすごく分かります。

―― 夢を夢だと認識できたプロセスがあったら、ぜひ教えてください。

桜井:
「世の中これが当たり前」という顔の見えない誰かの考えに縛られずに、自分の素直な感覚にもとづいた「理想」を考える習慣をつけることが、夢に敏感になるコツだと私は思っています。夢とは、つまりは自身の中にある素直な想いなので、ちゃんと社会のルールや人間の弱さを知ったうえで、自分なりの理想をもつことが、オリジナルな夢につながると思います。さらに言えば、その理想を叶えるすべが絶対にあると信じて、その方法を徹底的に探すことで、大抵のことは実現できると思っています。

―― なるほど、自分の外を一生懸命に探さなくても、自分の素直な気持ちの中に夢はあるということですね。では、その夢の実現に向けて、今年のグローバル・プロフェッショナル・プログラム(GPP)での目標や抱負を聞かせてください。

桜井:
私はこの10月にGPPの海外インターンシップとしてイギリスに行くので、まずはそこで一生懸命に学んでこようと思っています。この海外インターンに限ったことではないですが、帰国後に「いい経験だった」の一言で終わらせないように、学びのアウトプットとさらなるインプットをしっかり行おうと思います。

―― 最後の質問になりますが、今後GPPに参加する学生、あるいは今参加している学生に向けてメッセージをお願いします。

桜井:
GPPは「人間として」成長できる場だと思います。決して大げさではなく、私の人生を変えたプログラムです。ちなみに、本気で取り組む中でしか得られない気付きがたくさんあるので、とことん全力で取り組まれることをお勧めします。ぜひ頑張ってください! 皆さんと一緒に、私も努力を重ねていこうと思います。